毎年12月ころになると、3月に行なわれる卒業式や、その前に行なわれる「6年生を送る会」「保護者への感謝の会」などで歌われる合唱のピアノ伴奏の楽譜を持ってくる生徒が多くなります。
伴奏者をオーディションで選ぶ学校もあり、ピアノ講師として
なんとか自分の生徒を合格させたい
と一緒に練習に取り組む一方で、オーディションの在り方に疑問を持つこともしばしばあります。
この記事は、小学校の先生で「卒業式」「6年生を送る会」「保護者への感謝の会」「門出式」などに向けて
- 伴奏者の選び方で悩んでいる
- オーディションをどのように実施すればいいのかわからない
- 不公平感を生まない方法を知りたい
という方におすすめです!
現役ピアノ講師が、伴奏者候補になった生徒を日々レッスンするなかで感じた疑問・経験をとおして感じたことから、伴奏者をオーディションする際のポイントや注意点をまとめます。

ピアノ講師目線で解説♪
卒業シーズンにピアノ伴奏者が必要になる場面


まず卒業シーズンにピアノ伴奏者が必要になる場面を、いくつかご紹介します。
卒業式
もっとも多いのが卒業式の伴奏です。
卒業式は学校生活の集大成。
生徒・保護者・先生にとっても特別な日ですよね!
そのなかで、伴奏者は式の厳粛な雰囲気を支える重要な役割を果たします。
卒業式の伴奏は、おもに次の2つに分けられます。
- 6年生の合唱伴奏
- 在校生の合唱伴奏
①6年生の合唱伴奏の場合は、6年生のなかから伴奏者を選びますが、②在校生の合唱伴奏は5年生のなかから選ぶ、または5年生に弾ける子がいない場合はその他の学年から選ぶ場合もあるようです。



3年生で伴奏を頼まれてきた子も!
6年生を送る会
在校生が6年生への感謝の気持ちを伝えるイベントで、児童と生徒のみで行われることが多いようです。
保護者や地域の偉い人などが入らないイベントのため、卒業式ほど厳粛なイメージはありません。
卒業式の前の、2月末~3月上旬に行なわれる学校が多い印象です。
6年生を送る会の伴奏も、卒業式同様おもに次の2つに分けられます。
- 6年生の合唱伴奏
- 在校生の合唱伴奏
送る会の伴奏も、①6年生の合唱伴奏は6年生のなかから、②在校生の合唱伴奏は5年生、または5年生に弾ける子がいない場合はその他の学年から選ばれるようです。



伴奏者がいない場合はCD伴奏のことも!
保護者への感謝の会・門出式
6年生が保護者や担任の先生への感謝を伝えるイベントとして、卒業式前の2月~3月上旬、または卒業式後などに行なわれるイベントです。
イベントの名称は学校によって異なるかもしれません。
- 「保護者への感謝の歌」
- 「担任の先生への感謝の歌」
として合唱する場合は、伴奏者が必要になります。
6年生とその保護者、担任などが主になって行われるため、こちらも卒業式ほど厳粛な雰囲気にはならないでしょう。
公平なオーディションをするためのポイント


伴奏者オーディションを公平に行うためには、事前の準備が欠かせません。
オーディションを行う前に確認しておきたい重要なポイントをご紹介します。
オーディション日時は余裕を持って設定する
卒業シーズンに伴奏を頼まれてくる私の生徒では、多くの場合
冬休み前に楽譜をもらってきて
1月下旬にオーディション
というパターンです。
楽譜をもらってからオーディションまで約1ヶ月あることになりますね。
さらに冬休みを挟んでいるため、自分で楽譜を読んでどんどん練習を進められる生徒は余裕かもしれません。
しかし、
ピアノの先生にしっかり教えてもらわなければ進められない
という生徒にとっては、レッスンもお休みとなる年末年始はまったく前に進めないのです。
そのような生徒への配慮も必要だと感じるのであれば、
12月に入ったらすぐに楽譜を渡せるように準備する
ことをおすすめします。



譜読みが早い生徒ばかりじゃない!
選考基準・オーディション範囲を明確にする
生徒や保護者に対して、オーディションの選考基準や内容・範囲をしっかりと伝えましょう。



学校で「●日までこの曲を弾いてきて」って言われた
と生徒が楽譜を持ってくるのですが、ピアノ講師側からしてみると、そこにはいろいろな疑問が出てきます。
- 6ページ全部弾いていくの?
- ゆっくりでも両手で弾ければいいの?
- 片手ずつではダメなの?
- 最後まで完璧に弾いていかないといけないの?
- 一部の場面(AやBなど)だけ表現力のある演奏では評価されないの?
- ペダルは入れたほうが評価が高くなるの?
このように疑問点がいくつも湧いてくるため、具体的に次のようにお手紙で渡していただけると、ピアノ講師としてとても助かります!
(例)
・オーディションは●月×日に行ないます。
・審査員は○○先生、▲▲先生、◇◇先生です。
・オーディションでは「◆◆◆」の曲の1番の終わりまで両手で演奏してもらいます。
・できるだけ止まらずに一定のテンポで弾きましょう。
・ペダルを入れられる人は入れても構いません。
もし楽譜を渡すのが遅くなり、オーディションまでの時間が短いのであれば、演奏範囲を短めに設定してあげたほうが親切かもしれません。
厳粛な卒業式の伴奏者に必要なもの
さらに、卒業式での伴奏者は厳粛な式でのピアノ伴奏になるため、表現力や演奏のテクニックだけでなく
- 責任感・協調性
- メンタルの強さ・度胸
- 発表会やコンクールなど場数の多さ
も必要になるでしょう。



公平感のあるオーディションを!
生徒が弾けるレベルの曲を選曲する
生徒が弾けるレベルの曲を選曲することも大切です。
なかには



どうしても担任の先生が歌わせたいみたいなんです
ということで、中学校の合唱コンクールで歌われるような難しい伴奏の楽譜を持ってきた生徒もいました。
半年かけてもその生徒が弾けるレベルの曲ではなかったため、伴奏辞退のお手紙を書いたこともあります。
生徒のレベルはどのように見極めるのかは、こちらの記事を参考にしてください。
\生徒のレベルの見極め方/


点数・評価の見える化もあり
芸術分野の採点は、個々に採点する視点が異なるため難しいものがあります。
たとえば、どういった項目をどのように審査したのか、点数や評価(A・B・Cなど)で採点し、一言コメントを添えて生徒に渡してあげると、生徒や保護者も納得できるかもしれませんね。
ピアノ講師としても、「なぜオーディションに合格できなかったのか」を生徒の話だけで状況を確認すると、よくわからない点もあるのが現状です。
評価を見せてもらうことで、
この部分を強化すれば、次のチャンスをつかめるかもしれない!
と、前向きに指導できるため、「評価の見える化」をぜひご検討いただけると嬉しいです。



お願いします♪
イベントごとに曲を分けてオーディションしよう


前述のとおり、卒業シーズンは何人かピアノ伴奏が必要になります。
オーディションする曲は「卒業式で歌う曲」だけど、選ばれなかった生徒には「保護者への感謝の会で歌う曲」を弾いてもらいます。
このような条件で、伴奏の楽譜をもらってきた生徒がいました。
しかし、よく考えてみてください!
選ばれなかった生徒は「卒業式で歌う曲」を必死に練習していたのに、「保護者への感謝の会で歌う曲」という新しい曲をゼロから取り組むことになるのです。
しかもオーディションが終わってから練習をするので、本番まで期間が短いというのも問題になります。



それはかわいそう!
難易度の違う曲をイベントごとに準備する
そこで提案したいのが、
それぞれのイベントごとに曲のレベルを分け、オーディションする方法
です。
オーディションも「生徒が自分で演奏できそうなレベルの曲を選んでもらう形式」にすると、ライバルも少なくなり、生徒自身の練習の負担も軽くなるでしょう。
楽譜を見ただけで弾けるのか判断できない生徒も
なかには、どのくらいのレベルの曲を弾けるのか自分で判断できない生徒もいます。
その場合はすべての楽譜を生徒に渡して、お母さんやピアノの先生と相談して選んでくるように伝えてみてください。



コピー譜を持たせてください♪
オーディション後の生徒フォローも忘れずに


伴奏者オーディションは選考を伴うため、落選する生徒ももちろん出てきますよね。
その場合、次のようなフォローを行うことで、生徒たちが前向きに受け止められるようサポートしましょう。
指揮や司会などほかの役割を提案する
卒業式や卒業に向けたイベントでは、ピアノの伴奏者以外にも多くの役割があります。
たとえば、
- 合唱の指揮者
- 合唱のパートリーダー
- 司会進行
- 在校生や保護者への感謝の言葉
など、目立つ場面で活躍できる役割を提案してみましょう。
そうすることで、少しでも落選の悔しさを緩和できるかもしれません。
良かったところやアドバイスも伝える
オーディションに向けて伴奏の練習をしてきた生徒は、遊ぶ時間や出かける時間を制限して頑張ってきたかもしれません。
その努力を認めるとともに、良かった点をたくさん見つけて褒めてあげてください。
また、
- どのような点を改善すれば伴奏者に選ばれたのか
- どんなこと足りなかったがのか
なども併せて伝えてあげることで、次のチャンスでそのことを意識して取り組めるようになるでしょう。
\オーディション後の言葉がけにも使える/


次の演奏機会を提案する
ピアノを続けるモチベーションを保つために、次に演奏する機会があることも提案しておきましょう。
6年生の場合は、中学校に進学した際に合唱コンクールがありますね。
5年生の場合は、6年生の文化祭や卒業式など、まだまだチャンスがあります。
また頑張るチャンスがあることを伝えれば、「次こそは!」と生徒も意気込み、練習に励むきっかけになるかもしれません。



「落ちたら終わり」じゃない!
左右で分けて演奏させることはおすすめしない
せっかくオーディションを受けてくれたから…
オーディションしたけれど、一人で全部演奏するのは大変そう…
このように感じた学校の先生が、
本来は両手で伴奏する曲を 右手は○○ちゃん、左手は▲▲ちゃん
というように連弾で演奏させようとする場合があるのですが、あまりおすすめできません。
その理由は、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
\左右で分けるのは危険/


思い出に残る卒業式になりますように


卒業シーズンのイベントのために、ピアノ伴奏者をオーディションする際のポイントをご紹介しました。
みんなが納得できるよう、公平に生徒の気持ちに寄り添って審査していただけると、ピアノ講師として嬉しいです。
また、卒業式は寒い体育館で行われることが多いのではないでしょうか?
ピアノ伴奏の生徒には、当日指を温められるように手袋やホッカイロなど持参するように声掛けしていただけると、生徒の指もいつも通り動かせるはずです。
担任の先生から、緊張をほぐすためのフォローもお忘れなく!



すてきな卒業式になりますように♪
\本番で指揮する先生はこちらも必見/


この記事を書いた人


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はじめまして、nabecco(なべっこ)です。
のんびり田舎ぐらしをしながら、自宅でピアノ&エレクトーン講師をしています。
生徒時代は練習嫌い・劣等生だった経験を活かし、そんな人でも楽しく音楽を学べるような記事作りを心がけています。
主婦目線での子育て情報も。
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