牧歌といえば、どんな作品をイメージしますか?
パストラルとも呼ばれ羊飼いが吹いていた笛の音が由来とされています。
「牧歌的」という言葉があるように、田園・牧草地を彷彿させるのどかな旋律が特徴ですが、実際に目で見て耳で聴いたほうが早いかもしれませんね。
この記事は
- 牧歌の曲のイメージをつかみたい人
- いろいろな牧歌を聴いてみたい人
- 有名な牧歌を聴きたい人
- 作曲家ごとの作風の違いを聴き比べてみたい人
におすすめです!
いろいろな作曲家の牧歌(パストラル)を聴き比べると、あらたな発見があるかも?
癒される曲がたくさん♪
いろいろな作曲家の代表作を聴いてみよう
牧歌は「牧歌的要素」を含んだ曲なので、
田園詩・田園曲・羊飼いの歌
なども牧歌の一部となります。
羊飼いが広大な牧草地で奏でるパンパイプの笛の音が由来とされているので、さまざまな作曲家の「牧歌(パストラル)」はのどかで、どこか懐かしさを感じられるような曲が多くあります。
牧歌の意味を理解したうえで、いろいろな作曲家の代表作を聴き比べてみましょう!
\ 牧歌ってなに? /
\ クラシック入門におすすめ /
ブルグミュラーの牧歌
ピアノを習っている子の登竜門的存在のブルグミュラー。
ドイツの作曲家であり、練習曲を通して奏法・テクニック・表現力などを身に付けることができます。
「25の練習曲」より3番 パストラル(牧歌)
「ブルグミュラー25の練習曲」の3曲目に牧歌が収録されています。
この練習曲のなかでの難易度は低め・・・ですが、拍子感をキープしたり場面ごとのドラマを表現するのに苦労するかもしれません。
右手のメロディーがパンパイプの音色をイメージすると、フレーズ感を意識できると思います!
J.S.バッハの牧歌
バロック時代・ドイツの作曲家であるJ.S.バッハ。
日本では「音楽の父」とも呼ばれていますね!
教会オルガニストも務めたバッハは、教会音楽を数多く作曲しています。
牧歌(パストラル)というと田園風ののどかな楽曲を意味しますが、バロック時代はどちらかというと「キリストの降誕を祝う音楽」という意味を持っていたそうですよ。
\ 教会・クリスマスに深い関係が! /
「クリスマス・オラトリオ」より第二部冒頭のシンフォニア
「クリスマス・オラトリオ」はクリスマスの時期にミサやコンサートで演奏されることが多い曲です。
オラトリオはオペラに似た形式で宗教色が強い作品なのですが、この第二部冒頭のシンフォニアは歌はなく、器楽だけで演奏されます。
このシンフォニアは通称「オーケストラ・パストラーレ」とも呼ばれていて、単独で演奏されることもある人気曲なんですよ!
「パストラーレ」ヘ長調(BWV590)
こちらの作品はペダル付きチェンバロのために書かれた作品ですが、パイプオルガンで演奏されています。
空気感のあるオルガンの響きに癒されますね!
バッハのパストラーレは4つの場面から構成されていて、この第1曲は「シチリアーノ風」というタイトルがつけられています。
オルガンがパンパイプに聴こえる♪
ちなみに第3曲の「アリア」はルパン三世「カリオストロの城」でも使われていた曲です!
結婚式のシーンで使われているのですが、覚えていますか?
カリオストロの城は名作だね!
\ 結婚式のシーンを見てみてね /
\ バッハはカツラでした /
コレルリの牧歌
バロック時代に活躍したイタリアの作曲家コレルリ(コレッリ)。
これからご紹介するコレルリの作品もバッハ同様、「キリストの降誕を祝う音楽」としての意味合いとして作曲されていると思われます。
合奏協奏曲第8番 ト短調「クリスマス協奏曲」Op.6 より パストラーレ
コレルリは合奏協奏曲をたくさん作曲しました。
その8番目の作品のなかの最終楽章が「パストラーレ」となっいて、8分の12拍子で作曲されています。
おごそかな雰囲気♪
ベートーヴェンの牧歌
かの有名なドイツ・古典派のベートーヴェンも牧歌的な曲として、「田園」というタイトルで作品を残しています。
交響曲第6番「田園」
こちらは「パストラル・シンフォニー」とも呼ばれている作品。
ベートーヴェンが求めていた「自由」を表現した作品としては「交響曲第9番」が有名ですが、この第6番も「自由」をテーマにしているといわれています。
学生のとき朝の時間に流れていた曲なので、朝日が昇るイメージだったのですが、実はこの曲には「田園に着いた時の愉しい気分」というサブタイトルが付けられているのだとか。
そういわれると4分の2拍子ですし、元気でウキウキな印象も受けます。
ベートーヴェンの見た田園は日本の「ザ・田んぼ」ではなく、小麦やぶどうなどの畑が広がる風景なので、イメージするときは気をつけましょうね!
ピアノソナタ第15番Op.28「田園(パストラーレ)」
ベートーヴェンのピアノ作品にも「田園」というタイトルのものがあるのですが、こちらは本人が付けたタイトルではないとのこと。
こちらの「田園」は通称として付けられたものですが、のどかで牧歌的な雰囲気であることからそのように呼ばれるようになったのでしょう。
全4楽章からできてるよ!
ワーグナーの牧歌
ロマン派の作曲家で数々の有名なオペラ作品を世に送り出したワーグナー。
楽劇王とも呼ばれるワーグナーも牧歌を作曲しています。
ジークフリート牧歌
「牧歌」というとこの「ジークフリート」をイメージする方も多いのではないでしょうか?
ジークフリートとはワーグナーの息子の名前です。
この曲は息子を生んでくれた妻への愛と感謝をこめて作曲されたといわれていて、とても美しく穏やかな曲調が特徴となっています。
ビゼーの牧歌
フランスの作曲家ビゼー(1838 – 1875)は、最後のオペラ作品となった「カルメン」が有名です。
付随音楽「アルルの女」はビゼー後期の作品。
「ファランドール」「メヌエット」などでもおなじみの作品ですね!
「アルルの女」より第2組曲冒頭のパストラール
「アルルの女」の舞台はフランス南部の農村地。
実はこのお話は、農民の男がアルルの女に失恋→自殺してしまうという悲劇的な作品なのです・・・
ちなみに、このパストラールの部分の歌詞は農民の男がアルルの女に恋する気持ちを歌っていて
羊飼いの娘さん、甘いキスをぼくにちょうだいよ
と迫る場面です!
こちらの動画の17:30くらいが第2組曲冒頭のパストラールの場面です。
ドビュッシーの牧歌
フランス近現代の作曲家ドビュッシー(1862 – 1918)もいくつかの牧歌的作品を作曲しています。
タイトルにこそ「牧歌」とは入っていませんが、牧神(ギリシャ神話に出てくる半人半獣:上記画像参照)や羊飼いをテーマにした作品は有名なので耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
牧神の午後への前奏曲
「牧歌」というタイトルは付いていませんが、マラルメの詩「牧神の午後」をテーマにしたこちらの作品は、パン・パイプ(パン・フルート)やアウロスというギリシャ楽器の音をフルートで表現している牧歌的な作品です。
目をつぶって聴いてみると、ギリシャ神話の世界に入っていってしまいそうになるファンタジックな世界観です。
「子どもの領分」より 5.小さな羊飼い
こちらも「牧歌」というタイトルは付いていませんが、羊飼いをテーマにした牧歌的な作品です。
ノスタルジックで幻想的な単旋律から始まりますが、これは羊飼いが吹く笛の音。
曲の最後まで笛の音が続きます。
冒頭は「牧神の午後~」を思い起こさせる!
「フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ」より I. Pastorale
こちらの動画の一曲目が「パストラーレ」です。
先ほどご紹介した「牧神の午後への前奏曲」で、【牧神が吹く笛の音=フルート】のイメージが定着しインスピレーションを得たドビュッシーは、このあともフルートの作品を生み出しました。
フルート・ヴィオラ・ハープ、という珍しい組みあわせです!
サティの牧歌
サティ(1866– 1925)もまたドビュッシーと同じフランスの作曲家ですね。
「音楽界の異端児(変わり者)」の異名を持つ作曲家でもあります。
サティはドビュッシーの家でランチをともにする仲間だったといわれていますが、ケンカもよくしたそうで・・・
晩年には絶交してしまったという話も有名ですが、次のような作品も残しています。
最後から2番目の思想 ドビュッシーへの牧歌
「最後から2番目の思想」はサティが1915年に作曲した全3曲から構成されるピアノ作品です。
同じフランス人作曲家の
- ドビュッシー
- デュカ(デュカス)
- ルーセル
に捧げられた作品で、それぞれ作曲家の名前がタイトルに含まれます。
- ドビュッシーへの牧歌
- デュカへの朝の歌(デュカスへの賛歌)
- ルーセルへの瞑想
ぞれぞれ約1分くらいの小品となっていて、メロディーには詩も付けられています。
ラヴェルの牧歌
ラヴェルも(1875 – 1937)フランスの作曲家で、先にご紹介したドビュッシーやサティよりちょっと若い世代です。
バレエ音楽「ダフニスとクロエ」
「ダフニスとクロエ」は、ギリシャ神話の牧歌的な恋愛ストーリーを背景に作られたバレエのための音楽。
吹奏楽版に編曲もされていて、コンクールでも人気の曲となっています。
フルートの使い方がドビュッシーの影響を受けている感じがしますね!
作曲家それぞれの個性あふれる牧歌
さまざまな時代の作曲家が残した牧歌を集めてみましたが、知っている曲はありましたか?
今では「のどかな田園風の曲」という認識ですが、時代によってキリスト教と強い結びつきがあったことも分かり、「音楽って深い!」・・・と改めて感じました。
牧歌(パストラル)について、曲の定義や由来についてもぜひ知識を深めてみてくださいね!
\ 羊飼いとキリストの関係も! /
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この記事を書いた人
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はじめまして、nabecco(なべっこ)です。
のんびり田舎ぐらしをしながら、自宅でピアノ&エレクトーン講師をしています。
生徒時代は練習嫌い・劣等生だった経験を活かし、そんな人でも楽しく音楽を学べるような記事作りを心がけています。
主婦目線での子育て情報も。
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